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Globally Important Agricultural Heritage Systems (GIAHS) related to tea

6. 安渓鉄観音茶文化システム (中国)

農林水産業システムの名称:
安渓鉄観音茶文化システム
Anxi Tieguanyin Tea Culture System
福建安溪铁观音茶文化系统
地域:中国福建省泉州市安渓県芦田鎮、虎邱鎮、西坪鎮 
認定日:2022年5月20日

主要産業である茶業
福建省の南東部に位置する安渓県は、亜熱帯海洋性気候に属しています。山と丘が多く、場所の違いで細かい気象の差が生じ、さまざまな微気候を作り出しています。安渓の気候は、お茶の栽培に適しており千年以上前からお茶が栽培されてきました。
安徽省のお茶文化は、宋(960~1279)と元(モンゴル帝国建国1206~1368)の時代以降に、海のシルクロードを経由して世界中に広まりました。
茶業は安渓の主要産業として、2017年は人口の約66.4%が茶業から恩恵を受けており、茶業から食品加工、機械製造、観光など多くの産業が発展しています。

安渓鉄観音
安渓茶は、半発酵茶である烏龍茶「鉄観音」が有名です。約300年前にお茶の木の品種「鉄観音」が発見され、烏龍茶「鉄観音」が生まれました。鉄観音は、蘭の花の甘い香りと芳醇さと爽快さを兼ね備えた風味があります。この鉄観音独自の風味は「鉄観韻 (观音韵)」と呼ばれています。
現在、安渓には100種類以上の品種のお茶の木があり、そのほとんどが烏龍茶に適した品種です

人と自然が織りなす複合的な農業システム
安渓鉄観音茶文化システムでは、お茶の木と森林と緑肥作物を複合的に栽培し、合理的な方法で水利と輸送施設を建設しています。
このシステムは、水源を維持し、水と土壌を保全し、栄養素循環を促進させ、そして茶園の微気候を調整する生態系の機能も備えています。
安渓では、お茶の木は丘や山の階段状のしっかり作られた段々畑で栽培されています。茶農家らは、丘や山の上に雨水を貯める池を作ることで水源を確保し水不足に備え、また洪水対策として茶園周辺に排水溝を作っています。これによりお茶の段々畑が崩れることなく保全できます。
また毒性の高い農薬や除草剤、葉面肥料(foliar-fertilizer)、レアアースを含む肥料の使用は厳しく禁止されています。
また、生態系補償メカニズムを推進し、土壌浸食が深刻な茶園は森林や草地に返還しています。

農業生物多様性
安渓では、お茶の木の他に、主食となる米、油の原料になる大豆や落花生、緑肥作物、繊維作物、果物なども栽培されています。そうした作物は茶園の周囲やお茶の木の間に植えます。米の藁や芋の蔓などは、豚や鶏などの家畜の餌やお茶の木の有機肥料としても使用されています。また、茶畑の周辺にある池では鯉や白エビなどが養殖されています。
この地域一帯の動植物は互いに依存しながら、複雑な生物多様性を構築しています。

お茶の木の増殖法
安渓は、安渓鉄観音と烏龍茶の半発酵茶の技術の発祥の地です。また、お茶の木の植物繁殖技術の発祥の地でもあります。安渓の一節挿し木栄養繁殖の技術(single-node cutting vegetative propagation technology)は、広く普及しました。

1640年頃、農民がお茶の木の枝を曲げて土に埋めると根が生えることを発見しました。この発見により、お茶の枝を曲げて土中に埋め発根させる増殖法「取り木」(Tea tree whole-plant layering propagation method)が開発されました。1920年頃には、切り取ったお茶の木の枝を土中に埋めて発根させる「挿し木」(Tea tree whole-branch layering propagation method)が行われるようになりました。その後1935年頃になると、お茶の葉の根元を土中に埋めて発根させる「挿し芽」(Short-scion cutting method)も開発されました。これらの増殖法により、短期間で成長に優れたお茶の木を多く栽培できるようになりました。

お茶文化
安渓のお茶文化は、地域における農業社会の発展に貢献し、文化、地域の信仰、生活習慣、文学、芸術にも大きな影響を与えてきました。お茶は飲用の他に結納品として使われるなど、お茶は冠婚葬祭においても重要な役割を果たしています。
安渓の茶藝は、自然に感謝し、茶農家を敬い、茶人を大切にし、「清、雅、礼、和」(纯、雅、礼、和)という茶道の精神を受け継いでいます。
2009年、中国文化省によりに、安渓は「中国の民俗文化と芸術(茶文化)の故郷 」(中国民间文化艺术(茶文化)之乡)に認定されました。

闘茶(斗茶 dòuchá) 
安渓では、お茶に関する催し物が多く実施されています。その一つがお茶の品質を競い合う「闘茶」です。闘茶は、茗戦(茗战 míngzhàn)とも呼ばれ唐代(618〜907)後期に始まりました。
烏龍茶の製法が確立し鉄観音が作られるようになると、お茶農家はお茶の製造技術について互いに教え合い、品質を競うことで、鉄観音の品質向上に繋がっています。また、技術の継承にもつながります。
安渓鉄観音斗茶大会や安渓鉄観音茶王コンテスト(安渓铁观音茶王賽)が開催されています。

エコツーリズム
世界農業遺産認定地域では、環境に配慮したお茶をテーマにした観光を実施しています。観光客は、ティーマナーハウス(茶荘)で、お茶摘みやお茶作りを体験し宿泊ができます。

安渓鉄観音には清香型、濃香(浓香)型 陳香(陈香)型があります。この記事の写真の鉄観音は清香型です。

参照:
The Food and Agriculture Organization (FAO), GIAHS Globally Important Agricultural Heritage System
http://www.fao.org/giahs/en/

FAO, GIAHS Globally Important Agricultural Heritage System, Anxi Tieguanyin Tea Culture System
https://www.fao.org/giahs/giahsaroundtheworld/designated-sites/asia-and-the-pacific/anxi-tea-cultures-system/en/
FAO駐日連絡事務所 Liaison Office in Japan
http://www.fao.org/japan/en/
GIAHSとは?
http://www.fao.org/japan/portal-sites/giahs/en/
農林水産省HP、世界農業遺産 Globally Important Agricultural Heritage Systems (GHIAS)

https://www.maff.go.jp/j/nousin/kantai/giahs_1_1.html

*本記事に関して間違った情報、新しい情報、追加すべき情報などお気付きの点がありましたら、CHAMARTまでご連絡いただけると幸いです。

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