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Globally Important Agricultural Heritage Systems (GIAHS) related to tea

4. 花開村における河東地方の伝統的茶栽培(韓国)

農林水産業システムの名称:
花開村における河東地方の伝統的茶栽培
Traditional Hadong Tea Agrosystem in Hwagae-myeon
花开传统河东茶农业系统
하동전통차농업
地域:韓国河東郡花開村
認定年度:2017年11月28日

韓国茶発祥の地 河東郡花開村
828年に中国の唐(中国)から韓国の使臣が茶の実を持ち帰り、王みずからが、お茶の実を河東郡花開村の双渓寺周辺に植えたと伝えられています。これが韓国におけるお茶の始まりと言われています。河東郡花開村は韓国のお茶の発祥の地とされています。
双渓寺は、統一新羅時代723年に開山された歴史のあるお寺です。

双渓寺 (2023年5月)

2023年5月に双渓寺を再訪したところ、境内にあった大きな急須は撤去されていました。

双渓寺の大きな急須 (2019年2月)

河東ティーミュージアムの裏手には、韓国茶の発祥の地の石碑が建っています。

韓国茶の発祥の地の石碑 (2023年5月)

厳しい自然環境と調和する茶業
河東郡花開村では、人々が1200年かけて、山岳地域の不毛な土地に適応した茶農業を営んできました。その結果、先祖代々伝わる伝統的な農業と独自の文化が継承されています。

河東郡花開村 茶畑 (2019年2月)

花開村は平地が少なく、土地の9割を急斜面の山々が占めています。南北に川が流れ、台風の季節にはしばしば洪水が起こり、安定した農業には適さない土地でした。そのため、地域の人々は稲作の他、岩の多い山の斜面や川べりにお茶を栽培し生計を立ててきました。しかし、清流があり霧が頻繁に発生するこの地域は、お茶の栽培に適しています。

河東ティーミュージアム近くの茶畑(2023年5月)

農業生物多様性
智異山の麓にある花開村は、蟾津江 (ソムジンガン섬진강 Seomjingang River)と花開川(ファゲチョン 화개전 Hwagae-ch’on)が合流する自然豊かな地域です。。
約1200年間、お茶の木は昆虫や風といった自然の力により受粉をし増え続けてきました。その結果、お茶の木は地域の環境に適応し、それぞれの茶畑ごとに遺伝的多様性を高めていきました。またこの地域固有の多様な動植物が生息しています。

花開川と蟾津江 (2023年5月)

伝統的な茶農業
花開村では、この地域の環境を生かした伝統的な方法でお茶を栽培しています。人による管理は、更新(gaengsin 갱신)と除草作業のみで最低限に抑えています。
更新とはお茶の木を深く刈り込むことです。この作業を行うことで、茶葉の収量と品質を向上させます。
また、茶畑周辺の草を手で刈り、お茶の木の根元や畝間に敷きます。これは、Pulbibae 풀비배と呼ばれ昔から行われていて、草堆肥を意味します。草だけでなく、乾燥させた森林の木の枝や葉を使うこともあります。

河東ティーミュージアム近くの茶畑 (2023年5月)

更新作業により刈り取られたお茶の木の枝や葉、草、森林の木の枝や葉は、時間をかけ堆肥になり、茶畑の土壌の酸性化、水分の蒸発、有機物の流出を防ぎ、冬はお茶の木を凍霜害から守ります。お茶の栽培に適した土壌のpHは4.5〜5.5で、花開の茶畑の土壌のphは約4.8です。
人手不足や生産量を増やすために、お茶農家によっては化学肥料を使い始めたところもあります。しかし、お茶の在来種の遺伝子や自然への影響を考え、多くの生産者は化学肥料や農薬を使わず、今なお伝統的な方法でお茶を栽培しています。

河東茶の茶畑と木の枝 (2019年2月)

昔は、僧侶たちがお茶を作っていましたが、その後お茶作りは、地域の人々に引き継がれました。
韓国では、蒸し製ではなく釜炒り緑茶が多く作られています。河東茶も釜炒り茶です。河東の伝統的な釜炒り緑茶は、手摘みした新芽のみを大釜を使い手で炒りながら作ります。この釜炒り緑茶は、繊細な香りと滋味が特徴です。ゆっくり味わうことで、河東茶の奥深さを知ることができます。

河東ティーミュージアム
手揉み釜炒り緑茶を作るための大釜(2019年2月)

河東茶 釜炒り緑茶 (2019年2月)

紅茶は、苦味はほとんどなく、烏龍茶のようなさわやかな風味でとても飲みやすいです。また、淹れ方は、緑茶と同様に抽出時間は約十〜数十秒です。香りはあまり強くありませんが、水色は薄い透明なオレンジ色でとてもきれいです。砂糖やミルクを入れず、ストレートで飲むのがおすすめです。

2023河東ワールドティー・エキスポ
河東茶の紅茶 (2023年5月)

河東ティーミュージアム 하동야생차박물관 (河東野生茶博物館)
河東ティーミュージアムでは、河東のお茶の歴史、河東の茶名人、茶器が展示されています。
またミュージアムショップでは、河東茶や河東茶を使ったさまざまな商品が販売されていました。

河東ティーミュージアム(2019年2月)

河東ティーミュージアム 世界農業遺産の認定証(2019年2月)

河東茶を使った商品と食事
河東のバス停のすぐ近くには、河東茶を使った料理がいただけるレストラン「찻잎마술 (チャッイプマスル chasipmasul))」があります。ランチは、河東茶から始まり、お茶の花の蜂蜜、茶の実の油、そしてたくさんの種類の副菜、河東茶の茶油などを使ったメインディッシュが出てきます。このランチはまるで河東茶の物語のようです。

찻잎마술 ランチのお茶と前菜 (2019年2月)

店内では、河東茶、お茶の実の油、コーヒーのように茶の実を焙煎し粉末にしたものなど、河東茶を使ったいろいろな商品を販売しています。こうした商品は、地域の人たちが手作業で生産しています。

찻잎마술 河東茶の茶の実を焙煎し粉末にした飲み物 (2019年2月)

花開(ファゲ Hwagae 화개)バスターミナルへの行き方:
ソウルからの行き方:
南部バスターミナルから花開バスターミナル行きのバスが一日数本出ています。所要時間は約3時間半です。乗車当日に空席があれば、南部バスターミナルでチケットを購入することができます。時間帯によっては出発前に満席になるので、事前にネットでチケットを購入することをおすすめします。韓国以外の国で発行したクレジットカードでは、チケットが購入できないかもしれません。
韓国市外バス前売りシステム (韓国語、日本語、英語、中国語ページあり)
https://intercitybusj.tmoney.co.kr/
釜山からの行き方:
西部バスターミナルから花開と河東(ハドン Hadong 하동) 行きのバスが一日数本出ています。所要時間は約3時間です。河東行きのバス乗った場合は、河東バスターミナルで花開行きのバスに乗り換えて下さい。河東バスターミナルから花開行きのバスは一日数本出ています。
電車で釜山駅から河東駅へ行くこともできます。河東駅から河東バスターミナルへは徒歩数分です。
花開バスターミナルから、双渓寺(サンゲサ Ssanggyesa 쌍계사)のバスターミナルまでは、バスで約20分です。双渓寺バスターミナルから河東ティーミュージアムまでは、徒歩で約10分です。

サイト内関連記事「世界のお茶 韓国」「お茶の種類 釜炒り茶(韓国)」「河東ティーミュージアム」「TEA FOOD da’O チャシップマスル (Chasipmasul 잎마술)

お茶関連施設:
河東茶博物館
 (Hadong Tea Museum) 하동야생차박물관
双渓寺
찻잎마술 술 (chas-ipmasul チャッイプマスル)
경상남도 하동군 화개면 용강리 418-1
418-1 Yonggang-ri, Hwagae-myeon, Hadong-gun, Gyeongsangnam-do
http://www.teafood.co.kr/

参照:
The Food and Agriculture Organization (FAO), GIAHS Globally Important Agricultural Heritage System
http://www.fao.org/giahs/en/

FAO, GIAHS Globally Important Agricultural Heritage System, Traditional Hadong Tea Agrosystem, Hwagae-myeon
https://www.fao.org/giahs/giahsaroundtheworld/designated-sites/asia-and-the-pacific/traditional-hadong-tea-agrosystem-in-hwagae-myeon/en/
FAO駐日連絡事務所 Liaison Office in Japan
http://www.fao.org/japan/en/
GIAHSとは?
http://www.fao.org/japan/portal-sites/giahs/en/
農林水産省HP、世界農業遺産 Globally Important Agricultural Heritage Systems (GHIAS)
www.maff.go.jp/j/nousin/kantai/giahs_1_1.html

*本記事に関して間違った情報、新しい情報、追加すべき情報などお気付きの点がありましたら、CHAMARTまでご連絡いただけると幸いです。

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