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南アジア

茶産地:
インドの茶産地は3地域に区分けされることが多いです。
北東部:アッサム (Assam)、カチャール (Cacharl)、ダージリン、ドアーズ (Dooars) 、テライ (Terai)など
南部:ニルギリ (Nilgiri)、アナマリー (Anaimalai)、ケララ (Kerala)
北西部:カングラ (Kangra)、テラダム (Dehra Dun)
お茶の種類:紅茶、緑茶、烏龍茶、白茶、フレーバーティーなど
紅茶の等級分類(茶葉の大きさと形状による分類)
オーソドックス製法
OP(オレンジペコ)、BOP(ブロークンオレンジペコ) 、BOPF(ブロークンオレンジペコファニング) 、D(ダスト)など
CTC(クラッシュ・ティア・カール)製法
B(ブロークン) 、F(ファニング)、 D(ダスト)など

国際連合食糧農業機構 (The Food and Agriculture Organization of the United Nations, FAO)の調査では、2019年度のインドのお茶の生産量と生産面積は共に世界第二位です。注1 主に紅茶が生産されていますが、緑茶、白茶、烏龍茶なども生産されています。茶摘みは手摘みで行われています。

ダージリンの茶畑(2019年8月)

主な茶産地:
アッサム Assam
インドのお茶の生産量の約半分はアッサムで生産されています。注2 アッサム州はインド北東部に位置し、茶園は北ヒマラヤ山脈とミャンマー国境のナガ山脈に流れるプラマプトラ川に沿ったアッサム渓谷にあります。
茶園は、アッサム渓谷の標高45〜60メートルの大平原にあります。アッサム渓谷の茶園は、北ヒマラヤ山脈とミャンマー国境のナガ山脈に流れるプラマプトラ川に沿ってあります。季節風がヒマラヤの山々にぶつかり雨を降らせ、プラマプトラ川からの水蒸気が雨や霧となることで、茶葉を湿らせます。アッサムの紅茶は濃厚で、こくと味わい深い渋味がありミルクティーに合います。

インドアッサムの茶畑 写真提供:松下智

ダージリン Darjeeling
ダージリンは、スリランカのウバ、中国の祁門(キーモン)に並ぶ世界三大紅茶の産地です。
ダージリンはインドの北東部の西ベンガル州ヒマラヤ山脈の麓に位置します。ダージリンはイギリス植民地時代に避暑地として開発されました。平地がほとんどないダージリンは標高300〜2,200メートルの急斜面に茶園が広がっています。1日の寒暖差が大きく霧が頻繁に発生し茶葉を湿らせます。ヒマラヤから吹く冷たい風が霧を晴らします。こうした気候はお茶の栽培に適しています。また、ダージリンの夏摘みのセカンドフラッシュの紅茶は、茶の害虫であるウンカがお茶の葉を噛むことで、マスカットや桃のような香りになります。

ダージリンの茶畑 (2019年8月)

ダージリンには線路幅がわずか61センチのトイ・トレインと呼ばれるダージリン・ヒマラヤ鉄道があります。イギリス植民地政府が茶葉や避暑客を移送するために建設しました。1879年に建設が開始し1881年に完成しました。インドの山岳鉄道群としてユネスコの世界遺産に登録されています。

ダージリン ヒマラヤの名峰カンチェンジュンガと茶畑(2018年8月)

ニルギリ Nilgiri
ニルギリはインド南部のタミル・ナードゥ州に位置します。ニルギリ丘陵の標高1,000〜2,500メートルの範囲でお茶が栽培されています。雨量が多く、霧がよく発生し、また1日の気温差があり、お茶の栽培に適しています。気候が似ているせいか、セイロンティーの高地の紅茶のようなマイルドな味わいです。

歴史
インドのお茶の歴史は中国ほど古くはありません。インドでお茶が本格的に栽培されるようになったのは19世紀になってからです。1600年にアジアとの貿易のためにイギリスで東インド会社が設立されました。東インド会社は中国からお茶を輸入していました。18世紀後半に中国の茶の木をインドで栽培することを試みましたが、うまく行きませんでした。
1823年にスコットランド人のロバート・ブルース少佐がアッサム地方で野生のお茶の木を発見し、翌年ロバートの弟のチャールズ・ブルースによっても確認されました。これがアッサム種の発見です。その後、アッサム地方でお茶の栽培が始まり、1838年にアッサムの紅茶がロンドンのオークションに出品されました。

ダージリン 紅茶と避暑客を運ぶために作られたトイトレイン (2019年8月)

19世紀後半から20世紀中頃までイギリス人の開発により、ダージリンなどインド各地でお茶の栽培と生産が行われるようになりました。茶園の開拓やお茶を運搬するための鉄道建設のために、ネパールやインド南部から住民が連れてこられ働くことになりました。

ダージリン 茶摘みの女性 カゴの中の傘は雨天用 (2019年8月)

ティーエステート
イギリス植民地政策により、茶園では労働者とその家族を住まわせ、診療所などの施設を設け生活全般の面倒をみるエステート方式のプランテーション(資本制大規模農園)が実施されました。主に女性が茶摘みをし男性が製茶工場で働き、植民地支配下で労働者の労働及び居住環境は過酷なものでした。
1947年にインドがイギリスから独立してからは、多くの茶園の運営はイギリス人からインド人に替わりましたが、ティーエステート方式は現在も行われています。

ダージリン、茶園労働者のための薬局と住居(2019年8月)

労働条件やティーエステートの住環境の改善や、労働者の子どもたちへの教育が提供されるようになりましたが、それにより人件費などの経費が増え経営が悪化する茶園もあります。フェアトレードなど海外の買主が適正な価格でお茶を購入する働きかけや、政府、国際機関や民間の支援団体による茶園労働者の子どもたちへの教育支援活動なども行われるようになりました。

チャイ
インドには人々が気軽に牛乳と水に紅茶の茶葉を煮出して作るチャイを飲めるチャイスタンドがたくさんあります。チャイはインドの国民的な飲み物です。牛乳100%のスペシャルチャイやサフランを入れたチャイもあります。

コルカタにあるティースタンド Sharmatea House (2019年8月)

チャイスタンドではサモサやドーナツなのスナックも売っており、チャイスタンドで朝食を食べて出勤する人もいます。チャイは素焼きのカップに入れ、飲み終わったら、空のカップをそのまま路上に捨てます。

コルカタにあるティーハウス、サフランチャイと甘いお菓子ジャレビ(Jalebi) (2019年8月)

コルカタやニューデリーなどの大都市にはパッケージがおしゃれなお茶を販売するティーハウスがあります。またアフタヌーンティーを楽しむこともできます。

ティーオークション
コルカタにあるお茶の取引所J.トーマスオークションでは、オンラインで入札が行われています。バイヤーは取引きが行われる前に、違う場所で茶葉と浸出液を拝見します。入札時はパソコンとネット環境があれば、オークション会場以外でも入札に参加できます。
休憩時にはオークション会場にいる人たちにミルクコーヒーとビスケットが出されました。
拝見:茶葉の形状や浸出液の香味などお茶の品質を確認すること

コルカタ Jトーマスティーオークション 休憩時間のミルクコーヒーとビスケット(2019年8月)

ティーツーリズム
インドの茶産地には、イギリス植民地時代に建てられたティーエステートを利用し観光客が宿泊できるホテルがあります。茶園散策、茶摘み、ティーテイスティングなどさまざまなお茶体験ができます。

ダージリン シングタムティーエステート & リゾート(Singtom Tea Estate & Resort) (2019年8月)

ダージリン シングタムティーエステート & リゾート(Singtom Tea Estate & Resort)
ティーテイスティング (2019年8月)

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注1:
The Food and Agriculture Organization of the United Nations
http://www.fao.org/home/en/
FAOSTAT http://www.fao.org/faostat/en/#home Tea
注2:Current Tea Scenario
INDIA TEA ASSOCIATION
Districtwise Indian Tea Production
1. Provisional Crop Estimates (M Kg) : July 2020 & 2019
https://www.indiatea.org/uploads/scenerio_image/1496838969.pdf
参照:
INDIA TEA ASSOCIATION https://www.indiatea.org
https://www.indiatea.org/history_of_indian_tea
TEA BOARD INDIA http://www.teaboard.gov.in
大森正司、阿南豊正、伊勢村護、加藤みゆき、滝口明子、中村羊一郎編(2017) 茶の事典 初版第一刷 朝倉書店
荒木安正、松田昌夫著(2002) 紅茶の事典 初版 柴田書店
磯淵猛著(2008) 紅茶の教科書 初版 新星出版社
角山栄著(2018) 茶の世界史 改版再版 中央公論新社
W.H.ユーカース(著) 杉本卓(訳) ロマンス・オブ・ティー 緑茶と紅茶の1600年 初版 八坂書房
松下智著(平成11年) アッサム紅茶文化史 雄山閣
アラン・マクファーレン、アイリス・マクファーレン著(2007) 鈴木実佳訳 茶の帝国: アッサムと日本から歴史の謎を解く第一刷 知泉書館
Louise Cheadle and Nick Kilby of teapigs. (2015), THE BOOK OF tea, London: Jacqui Small LLP
ティーピッグズ、ルイーズ・チードル、ニック・キルビー著 伊藤はるみ訳 世界の茶文化図鑑 The Book of Tea (2017) 初版 原書房
Helen Saberi (2010), Tea A Global History: Reaktion Books Ltd.
FAIR TRADE INTERNATIONAL https://info.fairtrade.net
https://info.fairtrade.net/product/tea
Mountain Railways of India https://whc.unesco.org/en/list/944/
UNESCO https://en.unesco.org
DARJEELING HIMALAYAN RAILWAY
http://www.dhr.in.net/index.php
Karma kettle tea house https://www.karmakettle.com

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