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粟ヶ岳茶畑ハイキング(静岡県掛川市)
CHAMART
静岡県掛川市東山は、伝統的に茶草場農法によりお茶が栽培されています。
掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町で実施されている静岡の茶草場農法は、2013年に世界農業遺産に認定されました。
サイト内関連記事「世界農業遺産 静岡の茶草場農法」
東山いっぷく処から粟ヶ岳山頂へ
東山には、標高532mの粟ヶ岳があります。ハイキングコースのスタート地点の東山いっぷく処から山頂までは約4キロあり、歩いて1から1.5時間で山頂へ登れます。
粟ヶ岳は、初心者でも登れますが、山頂近くの山肌にある登山道は細いため、気をつけて歩く必要があります。また、普段運動をしていない人だと、筋肉痛になるかもしれません。
東山いっぷく処には、登山者が入山と下山を記録する登山ノートがあります。そして、無料で木の杖を貸し出しています。
徒歩、自転車、バイク、車で行ける山頂
山頂まではハイキングコースとは別に、車道が通っています。東山いっぷく処から山頂までは、車で約15分です。車道は狭く、対向車とすれ違うことができるのは数カ所のみです。そのため、お正月、ゴールデンウィークなど混雑時は、時間制で登りと下りの片側交互通行になります。車道を歩いて山頂まで行くこともできますが、自動車だけでなくバイクや自転車も走っているので、気をつけて下さい。
東山いっぷく処への行き方
東山いっぷく処へは、自家用車、バスなどで行けます。JR掛川駅から東山線のバスに乗り、約30分で終点の茶文字の里 東山に到着します。バスを降りると、東山いっぷく処があり、ここが登山口になります。
掛川バスサービス 東山線
http://www.kakegawabus.co.jp/timetable/higashiyama_higashiyama
東山いっぷく処
東山いっぷく処のスタッフは、いつも笑顔でお店に来る人を迎えてくれます。東山いっぷく処は、登山客の憩いの場です。
東山茶、東山茶で作ったおまんじゅう、羊羹、地元の食材などを販売しています。また、夏にはかき氷、冬には焼き芋、静岡おでんの大根、お汁粉なども提供しています。ハイキング前に、おやつとお茶を購入できます。呈茶サービスがあり、東山の深蒸し茶をいただけます。
いっぷく処には駐車場がありますが、土日・祝日になると東山いっぷく処近くの駐車場は満車になります。その場合、東山いっぷく処から少し歩いた場所に、臨時駐車場が設けられます。
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ハイキングスタート
ハイキングコースは、東山いっぷく処から車道を少し歩木、茶畑の中を進んでいきます。登山客が道に迷わないように、要所要所に看板が設置されています。茶畑の中のコンクリート製の道を歩きます。この道は、お茶農家の人たちが農作業のために作ったものです。
美しい茶畑を眺めながら歩くのは、とても気持ちが良いです。
茶畑ハイキング
ハイキングコースの半分は、茶畑の中を歩きます。そのため、お茶農家の人たちの作業を見ることができます。作業のじゃまにならなよう、登山します。
CHAMARTは、作業中の写真を撮影したい時は、農作業が一段落するのを待ち作業者に声をかけるようにしています。そして、撮影とインターネット上で紹介することの許可を得てから、写真を撮影しています。
四季折々の粟ヶ岳
粟ヶ岳と茶畑は、季節ごとに、その表情を変えます。
春になると、茶畑が萌黄色に輝きます。
夏になると、茶畑は鮮やかな緑色に変わります。秋冬番茶に向け、葉と枝を深めに刈る作業が行われます。夏が終わる頃、お茶の花が咲き始めます。
秋になると、茶畑周辺のススキやササなどの茶草が黄金色に変わります。
冬になると、茶畑に茶草が敷かれます。
茶草場と茶草:茶畑周辺のススキやササなどが生えている草地を「茶草場」、そしてススキやササを「茶草」と呼びます。茶草場農法は、茶畑周辺のススキやササを刈り取り細かくし、茶畑の畝間に敷きます。
ニホンカモシカ
粟ヶ岳には、特別天然記念物のニホンカモシカが生息しています。ニホンカモシカは大人しく、人と出会うと静かに去っていきます。
粟ヶ岳の豊かな自然
茶畑を抜けると、森の中に入ります。森の中の登山道は、滑ることもあるので、気を付けて歩きます。東山の人たちが登山道を整備をしています。
自然豊かな粟ヶ岳
粟ヶ岳には、希少な動植物が生育しています。
春や夏には、運が良ければ羽のないカケガワフキバッタに出会えるかもしれません。カケガワフキバッタは、静岡県内の大井川と天竜川に挟まれた地域に生息する固有種です。
自然保護のために、粟ヶ岳の動植物を持ち出さず、ゴミは持ち込みません
生物多様性と茶草場農法
茶草場農法を行い、背丈の高いススキやササを刈り取ることで、小さな動植物は陽の光を受け、生き続けることができます。茶草場農法により、東山の生物多様性が守られています。
南平広場
登山口を山頂少し手前にある小道を左に行くと、南平広場へ行くことができます。南平広場からの眺めは良く、春は桜が咲きます。ここでピクニックをすると、とても気持ちが良いです。
阿波々神社
登山道を通り、山頂に到着すると阿波々神社があります。阿波々神社は、天平8年(736年)に創建されたと伝えられる、歴史のある神社です。お願いすると、阿波々神社の御朱印をもらえます。
神様が君臨する巨岩
阿波々神社のすぐ下の森の中に、「磐座(いわくら)」と呼ばれる巨岩群があります。磐座は、神様が天上界(高天原)より君臨されたと伝わる神聖な場所です。
無間の鐘
阿波々神社の裏手に、「無間の鐘」を埋めたと伝わる「無間の井戸」があります。「無間の鐘」は、昔話「遠州の七不思議」の一つです。
昔、仙人が粟ヶ岳の頂上の古い松に鐘をかけました。その鐘をつくとなんでも願いが叶い、その噂が広まり登山する人が多くなりました。その当時、道が狭くしっかりしていなかったため、多くの人たちが足を滑らせ、谷底に落ち、命を落としたり、怪我をしました。そのため、この鐘は「地獄へ落ちる鐘」と恐れられるようになりました。その後も、強欲な長者が末長く長者になれるようにと鐘をついていたところ、谷底に落ちてしまいました。この鐘が災いをもたらすため、お寺の住職は、この鐘を外し、粟ヶ岳の山頂にあった井戸の底に埋めてしまいました。その井戸は「無間の井戸」と呼ばれるようになりました。
山頂からの景色
粟ヶ岳山頂にあるかっぽしテラスの2階に上がると、眼下に広大な茶畑が広がっています。天気の良い日は、富士山、伊豆半島、駿河湾、南アルプス、富士山静岡空港が一望できます。冬の晴天の日は、かなり高い確率で富士山を見ることができます。
山頂のかっぽしテラス(粟ヶ岳世界農業遺産茶草場テラス)
2019年に、静岡県掛川市東山の粟ヶ岳山頂に、2階建ての「粟ヶ岳世界農業遺産茶草場テラス(愛称 かっぽしテラス)」がオープンしました。
かっぽしテラスでは、東山茶やランチをいただけます。ランチでは、かっぽしランチ、静岡おでんの大根、掛川牛を使ったカレー、とろろうどんやそばなどを提供しています。
1階と2階へはスロープで行くことができ、多目的トイレがあります。
毎年12月中旬頃から、東山のお茶農家の人たちが中心になって、かっぽしテラスの前の庭に、茶草で翌年の干支を作ります。
サイト内関連記事「かっぽしテラス(粟ヶ岳世界農業遺産茶草場テラス)」
茶文字
粟ヶ岳の斜面の茶文字はヒノキ約千本で形作られており、一辺が約130メートルあります。昭和7年(1932)に、地元の人たちが、東山茶を広めるために、松を植え茶文字を作りました。しかし、マツクイムシで松が枯れたため、昭和58年(1983)にヒノキに植え替えられました。
安全な登山と環境保全
東山の人たちは、安全にハイキングができるよう、登山道の整備、茶文字周辺や茶草場テラスの草刈りなどの作業を行っています。粟ヶ岳の茶文字周辺の草刈りは、2年に一度実施されています。30度以上ある傾斜地で草を刈って束ね、ワイヤーで車道まで引き上げます。
サイト内関連記事「静岡の茶草場農法 草刈りと草上げ」
参照:
掛川市 https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp
指定希少野生動植物種東山保護地区の指定について
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/gyosei/docs/8695.html
掛川のおもしろい伝説・逸話 無間の鐘
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/gyosei/docs/7621.html
阿波々神社 http://www10.plala.or.jp/awawajinjya/
掛川バスサービス 東山線
http://www.kakegawabus.co.jp/timetable/higashiyama_higashiyama