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茶産地:
スリランカ中央の山間部とその周辺南部の山麓地帯が茶産地です。お茶は栽培地の標高により分類されます。標高600メートルまでの低地で栽培されるローグロウンティー(Low grown teas)、中産地標高600から1,200メートルの中間地で栽培されるミドルグロウンティー(Mid Grown teas)、標高1,200メートル以上で栽培されるハイグロウンティー(High grown teas)の3つです。それぞれの気候によって紅茶の風味が違います。
ハイグロウン:ヌワラエリア(Nuwara Eliya)、ディンブラ(Dimbula)、ウバ(Uva)
ミドルグロウン:ウダ・プッセラワ(Uda Pussellawa) 、キャンディー(Kandy)
ローグロウン:ルフナ(Ruhuna)、サバラガムワ(Sabaragamuwa)
お茶の種類:紅茶、緑茶、烏龍茶、白茶、フレーバーティーなど
紅茶の等級分類(茶葉の大きさと形状による分類)
オーソドックス製法:OP(オレンジ・ペコー)、BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー) 、BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス) 、D(ダスト)など
CTC(クラッシュ・ティア・カール)製法:B(ブロークン) 、F(ファニングス)、 D(ダスト)など
セイロンティー
国際連合食糧農業機構 (The Food and Agriculture Organization of the United Nations, FAO)の調査では、2019年度のスリランカのお茶の生産量と生産面積共に世界第四位です。注1 主に紅茶が作られていますが、緑茶、烏龍茶、白茶などのお茶が作られています。
イギリスによる植民地時代、スリランカはセイロンと呼ばれ、1948年に独立後も1972年にスリランカ共和国と改称するまではセイロンが国名でした。そのため現在もスリランカのお茶はセイロンティーと呼ばれています。スリランカでは紅茶に砂糖をたっぷり入れて飲みます。粉ミルク、牛乳、練乳などを入れて飲む人も多いです。
主な茶産地:
ヌワラエリア:スリランカの中央の山間地に位置し、イギリスの植民地時代、お茶の栽培によって開けた避暑地です。茶園は標高1,600〜1,800メートルの場所にあり、スリランカの茶産地では、最も標高が高い場所にあります。霧、昼と夜の寒暖差により、花のような香りと味わい深い渋味のある紅茶になります。オレンジペコとブロークンオレンジペコが人気です。
ディンブラ:ディンブラはヌワラエリアの南西部に位置します。茶園は標高1200メートル以上の場所にあります。この地域の紅茶は、さわやかでマイルドな味わいです。
ウバ:ウバはインドのダージリン、中国の祁門(キーモン)に並ぶ世界三大紅茶の産地です。ウバはスリランカの南東部に位置し、茶畑は標高1,400〜1,700メートルの場所にあります。北東と南西から季節風が吹き付けることで、ウバ特有のフルーティーな香りのある紅茶を作り出します。
ウダ・プッセラワ:ウダ・プッセラワは、ヌワラエリアに隣接した地域です。ヌワラエリアの紅茶と比較すると水色は少しピンクがかった濃い色です。雨量が多いことで濃い風味の強い紅茶になります。
キャンディー:キャンディーは季節風の影響を受けにくく気候の変化が少ない地域です。茶園は標高600〜800メートルの場所にあります。渋味が少ないマイルドな味の紅茶です。
キャンディーにはセイロンティーミュージアムがあります。
キャンディーヌワラエリア間の鉄道は茶畑を抜け、列車から見る茶畑の景色は圧巻です。
ルフナ:ルフナは南部の海岸に面した場所にあります。茶園は標高200から400メートルにありスリランカでは最も標高の低い茶産地です。気温が高く雨量が多いため、他の地域と比べるとお茶の木の成長が早く、茶葉は約2倍の長さです。しっかりとした渋味と香りの良い紅茶です。
サバラガムワ:サバラガムワの茶畑は標高610メートルの場所にあります。お茶の木の成長が早く、ミドルグロウンティーやハイグロウンティーと比較すると、お茶の木の成長が早く、お茶の葉は長く大きいです。一見するとルフナのお茶に似ていますが、香りが違います。サバラガムワの紅茶はほのかな甘いキャラメルのような香りがします。
水色:お茶の浸出液の色
歴史
スリランカではオランダによる植民地時代に、コーヒーの栽培が行われるようになりました。しかし、コーヒーがさび病になり、コーヒー農園は破綻していきました。
1802年にイギリスはオランダからスリランカの植民地支配を受け継ぎ、コーヒーの代わりにお茶の栽培が進められました。1824年にイギリス人が中国からお茶の木を持ち込み試験的に栽培しました。そして1839年には、インドからお茶の木を持ち込み試験的に栽培しました。1867年にスコットランド人のジェームス・テイラーJames Taylorがキャンディーで商業的なお茶の栽培を始め、1872年に紅茶工場を建設しました。ジェームス・テイラーは「セイロンティーの父」と呼ばれています。
1890年代にはコーヒー園は茶園に切り替わり、さらに茶園が増え労働者不足になりました。茶園で働く労働者不足を補うために、南インドからタミル人を強制移住させました。それより昔の紀元前2世紀中頃に、南インドからセイロン島北部に移り住んだドラヴィダ系の民族のタミル人もいました。
茶園では労働者とその家族を住まわせ、学校や診療所など施設を設け生活全般の面倒をみるティーエステート方式が導入されました。しかし、植民地支配下での労働は大変なものでした。
スリランカ共和国になり、茶園は国営化が行われ一時は生産量が落ちました。その後、民営化などを経て順調に生産量を伸ばし2000年には年間20万トンを超えました。
スリランカの人口の多数派シンハラ人と少数派タミル人の対立による内戦は、1983年から2009年まで続きました。この対立の発端はイギリス植民地政府が少数派タミル人を優遇したことです。イギリス植民地政府への不満を回避し植民地支配を強固なものにするために、シンハラ人とタミル人の間に対立を作りました。
ティーエステート
イギリスが植民地支配した国々において、お茶の栽培はプランテーションと呼ばれる単一作物を栽培する大規模農園が造られました。プランテーションでは茶園労働者とその家族を茶園内や周辺に住まわせ、学校や診療所などをもうけ生活全般の面倒をみるティーエステート方式が導入されました。当時は労働者に過酷な労働が強いられました。
1948年にスリランカは英連邦自治領「セイロン」として独立し、1978年に国名をスリランカ民主社会主義共和国に改称しました。
多くの茶園の運営はイギリス人からスリランカ人に替わりましたが、ティーエステート方式は現在も行われています。
労働条件やティーエステートの住環境の改善や、労働者の子どもたちへの教育が提供されるようになりましたが、それにより人件費などの経費が増え経営が悪化する茶園もあります。フェアトレードなど海外の買主が適正な価格でお茶を購入する働きかけや、政府、国際機関や民間の支援団体による茶園労働者の子どもたちへの教育支援なども行われています。
スリランカの茶葉を使い紅茶を製造販売する日本の大手飲料メーカーは、スリランカの茶園が持続可能な農園認証制度「レインフォレスト・アライアンス認証」の取得支援や茶園の子どもたちへの教育支援を行なっています。
セイロンティーミュージアム
キャンディーにセイロンティーミュージアムがあります。ミュージアムのスタッフが英語でガイドをしてくれます。紅茶の製造方法の説明、セイロンティーの歴史、紅茶の製茶機械などが展示されています。また、
ミュージアムの建物は植民地時代に建設された紅茶工場で、当時使用されていた建物の温度調整をする巨大なファン、最上階には監督者が工場全体を見下ろせるキャットウォークは、そのまま残っています。
最上階はショップとティールームがあります。
お茶ツーリズム
自然豊かなスリランカは観光に力を入れており、観光産業はスリランカの主要産業の一つです。広大な茶畑を走る鉄道、宿泊ができるティーエステート、工場見学、茶摘み体験などスリランカではティーツーリズムを楽しむことができます。
ヘリタンスティーファクトリー
ヌワラエリアには、1879年に建てられた紅茶工場をホテルに改装したヘリタンスティーファクトリーが茶畑の丘の上にあります。重厚感のあるとてもクラッシックなホテルです。茶摘み、ティーテイスティング、アフタヌーンティー、茶葉を使ったディナーのコース、お茶の成分が入った美容液のエステなど、多種多様にお茶を楽しむことができます。
セイロンティーを使ったコスメティック
スパセイロンは、2009年に設立されたスリランカの伝統医療アーユルヴェーダブランドです。セイロンティーなど、スリランカの自然の恵みとアーユルヴェーダを融合させたスキンケア商品などを販売しています。スパセイロンは、スリランカだけでなく日本を含む世界各地に店舗があります。
レインフォレスト・アライアンス認証:レインフォレスト・アライアンスはアメリカ、ニューヨークに本部を置く国際的な環境保護NGO(非営利組織)です。2001年にレインフォレスト・アライアンスは、森林伐採や環境破壊の要因となる木材生産、農地拡大、牧場経営等に歯止めをかける方法として、レインフォレスト・アライアンス認証制度を開始しました。この認証は農園向けとサプライチェーン向けがあり、認証を得るには、レインフォレスト・アライアンスが定めた環境への配慮、働く人たちの工場での労働環境やその家族の生活保障、ジェンダー平等など厳しい「持続可能な農業基準」を満たす必要があります。この認証を取得するとレインフォレスト・アライアンスの緑色のカエルの認証マークを商品に付けることができます。消費者はこのマークの付いた商品を購入することで、環境・社会・経済面で持続可能な社会を実現に寄与できます。
RAINFOREST ALLIANCE
英語:https://www.rainforest-alliance.org
日本語:https://www.rainforest-alliance.org/ja/
サイト内関連記事
「世界のお茶の生産状況」
「2016年一人当たりのお茶の消費量」
「セイロンティーミュージアム」
「スリランカ 紅茶鉄道 」
注1:
The Food and Agriculture Organization of the United Nations
http://www.fao.org/home/en/
FAOSTAT http://www.fao.org/faostat/en/#home Tea
注2:COMMITTEE ON COMMODITY PROBLEMS
INTERGOVERNMENTAL GROUP ON TEA
TWENTY-THIRD SESSION
Hangzhou, the People’s Republic of China, 17-20 May 2018
EMERGING TRENDS IN TEA CONSUMPTION: INFORMING A GENERIC PROMOTION PROCESS
III. UNTAPPED OPPORTUNITIES IN TEA MARKETS AT INDIVIDUAL AND GLOBAL LEVELS
Fig. 6: Top per capita tea consuming countries in 2016
http://www.fao.org/3/MW522EN/mw522en.pdf
参照:
Tea Exporters Association Sri Lanka http://teasrilanka.org
Ceylon Tea History http://teasrilanka.org/history
CEYLON TEA MUSEUM http://www.ceylonteamuseum.com/index.html
大森正司、阿南豊正、伊勢村護、加藤みゆき、滝口明子、中村羊一郎編(2017) 茶の事典 初版第一刷 朝倉書店
荒木安正、松田昌夫著(2002) 紅茶の事典 初版 柴田書店
磯淵猛著(2008) 紅茶の教科書 初版 新星出版社
W.H.ユーガース(著) 杉本卓(訳) ロマンス・オブ・ティー 緑茶と紅茶の1600年 初版 八坂書房
Louise Cheadle and Nick Kilby of teapigs. (2015), THE BOOK OF tea, London: Jacqui Small LLP
ティーピッグズ、ルイーズ・チードル、ニック・キルビー(著) 伊藤はるみ(訳) 世界の茶文化図鑑 The Book of Tea (2017) 初版 原書房
Helen Saberi (2010), Tea A Global History: Reaktion Books Ltd.
日本外務省 スリランカ民主社会主義共和国
https://www.mofa.go.jp
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/srilanka/index.html
わかる!国際情勢 2009年7月7日スリランカ内戦の終結~シンハラ人とタミル人の和解に向けて
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol40/index.html
HERITANCE TEA FACTORY http://www.heritancehotels.com/teafactory/
アラン・マクファーレン、アイリス・マクファーレン著(2007) 鈴木実佳訳 茶の帝国: アッサムと日本から歴史の謎を解く第一刷 知泉書館
中川なをみ/作、門内ユキエ/絵 (2016) 茶畑のジャヤ 鈴木出版 第2刷
栗原俊輔著 ぼくは6歳、紅茶プランテーションで生まれて。スリランカ ・農園労働者の現実から見えてくる不平等(2020) 第1刷 合同出版
SPA CEYLON http://www.spaceylon.com
スパセイロン https://spaceylon.co.jp
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*本記事でご紹介した情報が、変わっている場合があります。本記事に関して間違った情報、新しい情報、追加すべき情報などお気付きの点がありましたら、CHAMARTまでご連絡いただけると幸いです。
*当サイトのコンテンツは、「日本のお茶」と「世界のお茶」の全てについて記載しているわけではありません。また、各記事は、執筆者の個人的な経験や感じたことが表現されています。