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東アジア

産地:宝城 (Besoung)、河東 (Hadong)、済州島 (Jeju)、康津 (Gangjin)、山清 (San-cheong)、求礼(Gurye)、光州 (Gwanju)
銘柄:雀舌茶など
お茶の種類:緑茶(釜炒り茶、蒸し製玉緑茶)、白茶、紅茶、抹茶、フレーバーティーなど

朝鮮半島のお茶の始まり
1940年に発掘された高句麗時代(紀元前1世紀頃から668年)の壁画にはお茶が描かれており、朝鮮半島では高句麗時代からお茶が飲まれていたと考えられます。
中国から仏教と共に朝鮮半島にお茶が伝えられたと言われており、朝鮮半島の歴史書「三国史記」には、新羅時代(4世紀半ば〜935年)に中国から朝鮮半島にお茶が伝わったことが記載されています。新羅善徳(ソンドク)女王の時代(632-646)には、すでにお茶があったと伝えられています。

韓国茶発祥の地、河東郡花開村 双渓寺
新羅興徳王3年(828)に、中国の唐に派遣された使者・金大廉がお茶の種を持ち帰り、王の命により河東郡花開村にある智異(チリ)山の南側の双渓寺周辺に植えられたと伝えられています。これが韓国におけるお茶の始まりとされており、河東ティーミュージアムの裏手には、韓国茶発祥の地の石碑が建っています。
双渓寺は、723年に開山された歴史のあるお寺です。

河東郡花開 双渓寺 (2019年2月)

韓国茶の発祥の地の石碑(2023年5月)

世界農業遺産「花開村における河東地方の伝統的茶栽培システム」
河東郡は岩山が多いですが、岩山に調和するようにお茶の木が植えられています。
人による管理は、更新(gaengsin 갱신)と除草作業のみで最低限に抑えています。更新とはお茶の木の剪定作業のことで、この作業を行うことで茶葉の収量と品質を向上させます。また、茶畑周辺の草を刈り取り、お茶の木の根元や畝間に敷きます。これは、Pulbibae 풀비배と呼ばれ昔から行われていて草堆肥を意味します。草だけでなく、乾燥させた森林の木の枝や葉を使うこともあります。伝統的な製法では、手摘みした茶葉のみを、大釜を使い手揉みで作ります。この釜炒り茶は、苦味が少なく深い味わいがあります。

長年、自然環境に配慮した農法を伝統的に行ってきたことが認められ、河東郡花開村の伝統的な河東茶は、2017年世界農業遺産に認定されました。

花開村の茶畑 (2019年2月)

河東ティーミュージアム世界農業遺産の認定証(2019年2月)

河東ティーミュージアム (하동야생차박물관 河東野生茶博物館)
花開バスターミナルから徒歩約5分の場所に河東ティーミュージアムがあります。河東のお茶の歴史や、世界農業遺産に認定された花開村の伝統的な河東茶について展示されています。
河東茶博物館は、宝城にある韓国茶博物館と比べると規模は小さいです。

河東茶博物館(2019年2月)

敷地内には、お茶をテーマにしたオブジェがたくさんあります。
博物館に隣接するショップでは河東茶や河東茶を使ったサプリなどが販売されています。

河東ティーミュージアム (2019年2月)

双渓寺のバス停近くのお茶とお茶料理のお店TEA FOOD da’oは、河東茶をアクセントに使った料理が食べられるレストランです。ランチは、お茶のワイン、お茶の花の蜂蜜、茶の油、お茶の花を入れたお茶、前菜は2種類(一つは茶葉を使ったチヂミ)、22種類の副菜、そしてメインディッシュと続き演出が素晴らしいです。ランチはランチの副菜の数が多いため、食事は二人からとなり二人分の料金設定になっています。河東茶だけでなく茶の実の油など河東茶の製品も販売されています。店内にはお茶の花の油絵が飾られ、木のぬくもりを感じられるかわいらしいお店です。

河東郡花開村 TEA FOOD da’o (2019年2月)

宝城郡
お茶ツーリズム
宝城は韓国の南部に位置する全羅南道中南部の郡です。宝城には韓国茶博物館と大韓茶園観光農園などお茶の観光施設があります。また宝城の茶畑は、「夏の香り」など韓国のドラマのロケ地になっており、人気のある観光地です。

韓国茶博物館
韓国茶博物館は、宝城バスターミナルから車で約15分の場所にあります。
韓国茶博物館は、韓国のお茶の歴史、製造方法、青磁などの茶器、海外のお茶について展示されています。1階には宝城のお茶の栽培、作り方、検査、消費までの工程がジオラマで細かくそしてわかりやすく展示されています。展示物は韓国語と英語の説明書きがあり、展示物によっては日本語の説明文も記載されています。1階のショップにはお茶クッキー、お茶の実オイル、お茶の花のブローチなどお茶製品が販売されており、5階には展望台があります。

宝城郡 韓国茶博物館(2017年9月)

韓国茶博物館 展示物 製茶工程のジオラマ(2017年9月)

大韓茶園観光農園
大韓茶園観光農園には、第一茶園と第二茶園があります。第一茶園は、広大な森の中に、茶園、カフェ、レストラン、ショップがあります。小高い丘全体がお茶畑になっています。観光客は茶畑の中を散策しながら丘の頂上まで歩いて登ることができ、頂上からは宝城の景色が一望できます。

カフェでは緑茶ソフトクリームやお茶をいただくことができます。ショップでは緑茶を使ったお菓子やおしゃれでかわいい茶畑のイラストのノートなどのグッズも販売しています。第一茶園から車で約15分の場所にある第二茶園は平地にあり茶畑が広がっています。

大韓茶園観光農園 緑茶のソフトクリーム(2017年9月)

済州島
済州島南部の西帰浦には、韓国を代表するお茶のブランドOSULLOC(オソルロック)のティーミュージアムがあります。このティーミュージアムはモダンな建物で世界の茶器などが展示されています。

済州島 Jeju Osulloc Tea Museum (2018年1月)

予約をすれば韓国茶道「茶礼」体験ができます。カフェとショップが併設されており、カフェでは済州島の緑茶を使ったラテ、ロールケーキ、ソフトクリームなどがいただけます。

OSULLOCののカフェ緑茶ラテと緑茶のロールケーキ (2018年1月)

OSULLOCでは、済州島特産のみかんや山茶花などのフレーバーティーやほうじ茶と緑茶のミルクペースト(緑茶ミルクスプレッド)なども販売されています。パッケージもおしゃれです。
OSULLOCの茶園内には、大きなティーポットとティーカップのオブジェがあり、記念写真の撮影場所にオススメです。

OSULLOCの茶畑とティーカップのオブジェ(2018年1月)

お茶を使ったコスメ innisfree(イニスフリー)
innisfreeは、済州島で栽培されるお茶や蘭(オーキッド)など自然の恵みを使った韓国のコスメブランドです。
済州島のOSULLOCの庭園を通り抜けると、済州島生まれの自然派コスメブランドイニスフリーのチェジュハウスがあり買い物と食事ができます。カフェには、緑茶ミルクコーヒーなど見た目がおしゃれなメニューもあります。

済州島 innisfree チェジュハウス (2018年1月)

innisfreeのコスメは、インターネットで購入できます。
写真左:Intensive Skin Care Set with Black Tea ブラックティースキンケアトライアルセット
写真右:Hydration Skin Care Set with Green Tea グリーンティースキンケアトライアルセット

innisfree 緑茶と紅茶のスキンケアセット(2022年2月)

innisfreeだけではく、韓国では多くのコスメブランドが、お茶を使ったフェイスマスク、ハンドクリームなどを販売しています。

済州島の『済州火山島と溶岩洞窟群』は世界自然遺産に登録されています。済州島東部の溶岩洞窟を利用した「洞窟の茶園・茶喜然(DaHeeYeon)」があります。

求礼
伝統的製法で作る釜炒り緑茶
求礼郡は河東郡に隣接しており、蟾津江 (ソムジンガン섬진강)を挟んで東側が求礼郡、西側が河東郡です。
求礼の伝統的な釜炒り茶は、世界農業遺産に認定されている河東の伝統的な釜炒り茶の栽培・製造方法と同じ方法で作られています。人による管理は、更新(gaengsin 갱신)と除草作業のみで最低限に抑え、草や乾燥させた森林の木の枝や葉を使いお茶の木の根元や畝間に敷く草堆肥(Pulbibae 풀비배)を行なっています。

求礼 伝統的製法で作った釜炒り緑茶 (2023年5月)

求礼 自然仕立ての茶畑と草堆肥 (2023年5月)

お茶農家クレイエダヒャンペンション
求礼にはお茶農家が営むペンションがあります。時期が合えば、製茶工程の見学や大釜を使う手揉み茶体験もできます。

お茶農家クレイエダヒャンペンション (2023年5月)

サイト内関連記事「世界のお茶の生産状況」「2016年一人当たりのお茶の消費量」「お茶に関する世界農業遺産 花開村における河東地方の伝統的茶栽培システム(韓国)」「韓国茶博物館」「河東ティーミュージアム」「お茶の種類 釜炒り茶(韓国)」「お茶農家クレイエダヒャンペンション

参照:
FAO GIAHS PROPOSAL Traditional Hadong Tea Agrosystem in Hwagage-myeon November, 2017
http://www.fao.org/3/CA3445EN/ca3445en.pdf
長野覺、權兌遠編(2002) 日本と韓国茶の文化考 第1刷 海鳥社 韓国茶文化と茶礼
国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) J-STAGE www.jstage.jst.go.jp
金天浩Kim, Chon-Ho 日本調理科学会誌 Vol. 44,No. 3,93~99(0)〔総説〕韓国の茶文化
大森正司、阿南豊正、伊勢村護、加藤みゆき、滝口明子、中村羊一郎編(2017) 茶の事典 初版第一刷 朝倉書店
金明培(キムミョンべ) (昭和58年) 韓国の茶道文化 初版第一刷 ペリカン社
宝迫典子著(平成21年) 茶仏 第1刷 佼成出版社
「世界の歴史」編集委員編(2009)もういちど読む山川世界史 1版 山川出版
Helen Saberi (2010), Tea A Global History: Reaktion Books Ltd.
HADONG河東 https://www.hadong.go.kr/japanese.web
河東緑茶
http://www.hadong.go.kr/02412/02413/02414.web
大韓茶園観光農園 韓国語 http://dhdawon.com
韓国茶博物館 (韓国語・英語・ 日本語・中国語) http://www.boseong.go.kr/tea
宝城郡 https://www.boseong.go.kr
宝城への交通アクセス
https://www.boseong.go.kr/teajp/museum/directions
河東ティーミュージアム (韓国語) http://www.hadongteamuseum.org
双渓寺 (韓国語)  http://www.ssanggyesa.net
OSULLOC (韓国語) http://www.osulloc.com
innisfree イニスフリー(韓国語) http://www.innisfreeworld.com
日本語 http://www.innisfree.com/jp/ja

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