MENU

特集

松下智「茶の原産地を探るー7 アッサムのお茶」

お茶研究家・松下智氏による計7回に渡る「茶の原産地を探る」

第7回目 アッサムのお茶
アッサムは世界一の紅茶産地となっているが、イギリスが紅茶産地として着手するまでは、一大ジャングルで近代的な自動車より象の方がはるかに役立ったようである。ヒマラヤ連山をぶちぬけるプラマプトラ川は、ヒマラヤ山から急激にアッサム平原へなだれ込むわけで、数年に一度は大氾濫となったようで、現在でも数年に一度は大氾濫を起こすようである。

紅茶業の開発と共に、完全な暗渠排水も完成され、現在では安全な茶業となっている。時に不完全な排水の所では、何年かに一度の洪水で、茶畑が川の中ということもあるようである。
アッサムは、年中20から30度で茶の葉は一年中生育しており、茶摘みは一年を通して行われ、12月下旬から1月中旬が休止(製茶工場整備)となるわけで、年間を通して生産される。
アッサムの茶は大葉種で、年中生育は継続され休眠はない。
茶の本来は、落葉性のない大葉種であるが、茶葉の摘み取りは継続されるので、摘み残しの茶葉は本来の大葉種の姿となる。

アッサムの茶畑摘み 大葉種 写真提供:松下智

この大葉種の由来については、適格な資料を見出せないが、ミャンマー北部カチンの山地の大葉種ではないかとみている。
カメリア植物の集積地が茶の原産地と言われているが、その地は明らかにならない。しかし、大葉種を茶として、気候の変化に適応して大葉・中葉・小葉を中国国内から日本のような四季があり、降雨も年間を通してあり、その適応生育しているのが、現在の日本のチャである。その源は、中国雲南省西双版納地方を中心とした自生地にあるのではないかとみている。

おわりに
古くから茶の原産地は論じられているが、その解釈については、現在のところでは明らかではない。カメリア植物の集積地が茶の原産地であるという説は広く認証されており、現在では中国雲南省、ベトナムの境界地が注目されている。

1. まえがき
2. 東南アジア・日本の茶
3. 韓国の茶
4. 中国の茶
5. ベトナムの茶
6. ミャンマー(ビルマ)の茶
7. アッサムのお茶 

お茶研究家 松下智
松下氏は60年以上、国内外の茶産地を訪ね、お茶の歴史・喫茶文化など研究を続けています。愛知大学で教授を務め、退官後もお茶の原産地の研究を続け2010年には調査のためラオスを訪問しました。「日本名茶紀行」(雄山閣出版)、「茶の民族誌」(雄山閣出版)、「茶の原産地紀行」(淡交社)、アッサム紅茶文化史 (生活文化史選書)など、松下氏のお茶に関する著書は多数あります。

松下智氏
袋井市茶文化資料館(2021年12月)

1930年 長野県生まれ
1970年 茶の文化振興のために社団法人「豊茗会」を設立
1998年 愛知大学国際コミュニケーション学部教授に就任
2003年 O-CHAパイオニア賞 受賞/学術研究大賞 受賞
2016年 茶道具類・研究資料を静岡県袋井市に寄贈
2019年 ふじのくに茶の都ミュージアム客員研究員
2024年 全国税理士共栄会文化財団「人と地域の文化賞」
現在 ~ 松下コレクションを活かす会 名誉会長、袋井市茶文化資料館 名誉館長

現在、松下氏は袋井市茶文化資料館の名誉館長として土曜日に来館されています(来館されない日もあります)。袋井市茶文化資料館には松下氏がこれまでのお茶の調査・研究で収集した国内外の茶器、お茶、書籍、写真など約2千点が展示されています。
松下氏の来館日は静岡県袋井市茶文化資料館のサイトまたはFacebookでご確認下さい。

静岡県袋井市茶文化資料館 
https://fukuroi-tyabunkashiryokan.jp

サイト内関連記事
博物館 袋井市茶文化資料館(日本静岡県)
松下智(著) 日本名茶紀行